ZEH情報 トピックス

集合・補助金
令和7年度ZEH-M補助金(ハイグレード仕様)について
2025年09月10日
本記事では令和6年度に補助金の要件に定められた「ハイグレード仕様」を踏まえ、令和7年度ZEH-M補助金より要件に加わった「ハイグレード仕様」をご紹介します。また、令和6年度低層ZEH-M促進事業の事例を踏まえつつ、ハイグレード仕様を満たす事例および計算シミュレーションについても解説します。
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実際に補助金に申請する際は、他にも満たすべき要件がありますので、必ず公募要領をご確認ください。
集合住宅でも進む高断熱化・省エネ性能の向上について
昨年7月、「ZEH+ハイグレード仕様と、断熱等性能等級について」で取り上げましたが、戸建住宅を対象とするZEH補助金では断熱等性能等級6以上かつ一般住宅と比較して30%以上の一次エネルギー消費量の削減を満たす住宅をハイグレード仕様と定め、補助金の公募を行いました。
また、「令和6年度ZEH-M補助事業
交付決定関連情報〈低層集合住宅編〉」にて令和6年度に交付決定を受けた低層集合住宅では約45%が断熱等性能等級6相当以上で、住棟の再生可能エネルギー等を除く一次エネルギー消費量削減率30%を超える事業も全体の3分の1に達している状況をご紹介しました。
そこで今回は、一般的な間取りの集合住宅をモデルプランとして、中住戸・角住戸の再エネ除く一次エネルギー消費量削減率向上に効果的な設備仕様や計算方法をご紹介します。
省エネ性能の向上に効果的な設備仕様および計算方法
集合住宅の省エネ性能評価は、専有部と共用部を合わせた住棟評価となります。そのため特定の住戸だけはなく、住棟全体の削減率をバランスよく引き上げる必要があります。
また、一般的に角住戸と中住戸では外皮性能(UA値)に0.1ほど差があり、それにより角住戸の再エネ除く一次エネルギー消費量削減率は中住戸よりも3~5%低い値になります。このことからも角住戸の断熱性能を高めるだけではなく、中住戸・角住戸ともに省エネ性能の高い設備を導入することが効果的です。
それらを踏まえ、導入設備の選定やエネルギー計算の入力方法を見直すことで削減率がどのように変化するか検証した結果、以下のようになりました。
■設備仕様変更による再エネを除く一次エネルギー消費量削減率の検討
設備仕様 |
一般的な入力例 |
仕様または入力方法変更例 |
角住戸 |
中住戸 |
改善削減率(概算) |
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---|---|---|---|---|---|---|---|
当初の削減率 |
変更後の削減率 |
当初の削減率 |
変更後の削減率 |
||||
①暖冷房 |
主たる居室のエアコン |
主たる居室のエアコン |
23% |
26% |
27% |
30% |
+3% |
その他の居室のエアコン |
その他の居室のエアコン |
||||||
②換気 |
ダクト式第二種または第三種換気設備 |
比消費電力の入力 |
23% |
24% |
27% |
28% |
+1% |
③給湯 |
ガス潜熱回収型給湯器 モード熱効率:91% |
変更無し |
23% |
24% |
27% |
28% |
+1% |
浴室:手元止水採用無し/小流量吐水採用 |
浴室:手元止水採用 |
||||||
洗面:水優先吐水採用 |
変更無し |
||||||
④照明 |
主たる居室 |
調光制御:採用する |
23% |
24% |
27% |
28% |
+1% |
その他の居室 |
調光制御:採用する |
||||||
非居室 |
人感センサー:採用する |
||||||
変更による削減率向上割合 |
①〜④全て採用 |
23% |
29% |
27% |
33% |
+6% |
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地域区分:6地域、間取り:2LDK、住戸面積:55㎡の中住戸(UA値0.32、削減率27%)および角住戸(UA値0.42、削減率23%)にて試算
上記の検証により計算上、区分「い」のエアコン採用することで削減率は約3%向上し、削減率30%達成のためには最も効果的であることが分かります。それに加え、表の②~④の設備導入やエネルギー計算の入力方法を見直すことで、さらに削減率向上を図ることができます。
それでも削減率が目標に達しない場合は、特に角住戸に対して外皮性能(UA値)の向上による空調エネルギーの削減が効果的です。
同条件で外皮性能を向上することによる削減率の向上を検証したところ、UA値が0.02向上するごとに削減率が1%弱上がることが分かりました。具体的な方法として角住戸の妻側外壁の断熱材がグラスウールの場合、30mm厚くするとUA値は0.02ほど向上します。
これらを踏まえ、中住戸は30%よりも高い削減率を達成し、角住戸は可能な限り削減率30%を目指すことで住棟として削減率30%を実現できることが分かりました。
少し先の話になりますが、2027年度より戸建・集合住宅ともにZEH基準の定義見直しが予定されています。
集合住宅においては、
住宅性能表示制度における断熱等性能等級6の基準を満たす
再生可能エネルギーを除き、共用部を含む住棟全体で、
基準一次エネルギー消費量から35%以上の一次エネルギー消費量削減を達成
と従来のZEH-Mシリーズより高断熱で高い省エネ性能が求められます。
上記達成には30%より更に5%削減率向上が必要になりますが、削減率向上の方法としては外張り断熱の併用や樹脂サッシの採用といった外皮性能を高めることや、給湯設備をエコキュート等へ変更するといった方法が考えられます。
ハイグレード仕様を満たす事業への補助額
本記事では導入設備の見直しやエネルギー計算の方法を踏まえ、より高いレベルの高断熱化や省エネ設備の重要性についてご紹介しました。
その実現を支援するべく、令和7年度ZEH-M補助金では、ZEH化を進めるにあたり建築コストが大きくなる中層及び高層集合住宅を対象に、以下の1)、2)を満たす事業をハイグレード仕様と定め、戸あたりの補助額上限を引き上げて公募を行っています。
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1)
住棟を構成する全住戸の外皮性能が断熱等級6相当以上
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2)
住棟の再生可能エネルギー等を除く一次エネルギー消費量削減率が30%
<断熱等級と各地域区分で求められるUA値>
断熱等級 |
地域区分とUA値 |
|||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1地域 |
2地域 |
3地域 |
4地域 |
5地域 |
6地域 |
7地域 |
8地域 |
|
等級7 |
0.20 |
0.20 |
0.20 |
0.23 |
0.26 |
0.26 |
0.26 |
- |
等級6 |
0.28 |
0.28 |
0.28 |
0.34 |
0.46 |
0.46 |
0.46 |
- |
等級5 |
0.40 |
0.40 |
0.50 |
0.60 |
0.60 |
0.60 |
0.60 |
- |
等級4 |
0.46 |
0.46 |
0.56 |
0.75 |
0.87 |
0.87 |
0.87 |
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最後に、現在公募中の中層ZEH-M支援事業および高層ZEH-M支援事業の住宅における交付要件の主なポイントについてご紹介します。
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事業名より各公募情報ページをご覧いただけます
<中層ZEH支援事業>
公募期間:2025年12月5日(金)17時まで
補助額:40万円/戸又は50万円/戸(ハイグレード仕様を満たす場合)
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Ⅰ.
住宅用途部分が4層以上5層以下の集合住宅であること
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Ⅱ.
ZEH-MランクがZEH-M Ready以上であること
<高層ZEH支援事業>
公募期間:2025年9月30日(火)17時まで
補助額:補助対象経費の3分の1以内
上限40万円/戸又は50万円/戸(ハイグレード仕様を満たす場合)他
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Ⅰ.
住宅用途部分が6層以上20層以下の集合住宅であること
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Ⅱ.
ZEH-MランクがZEH-M Oriented以上であること
補助金を活用することで集合住宅の高断熱や省エネ性能の高い設備の導入ハードルが下がりますので、ZEH-Mの普及拡大にお役立てください。
また、本記事で取り上げた集合住宅における高断熱・省エネ化の現状については、ZEHトピックスの「令和6年度ZEH-M補助事業 交付決定関連情報〈低層集合住宅編〉」にて詳しくご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。